北のマサラ

ウペンドラ


2000 印 カンナダ語
鑑 賞:映画祭
俺評価:★★★★★
笑 い:★★★★
泣 き:★
性悪説:★★★★★

夕張ファンタで上映されるという情報は、上映半年以上前から非公式に知ってはいたが、札幌におけるインド映画上映の本数の少ない現実がある以上非常にうれしかった。
また、ウペンドラ氏本人、日本とバンガロールを行き来しているKojima氏やIndo.to方面の方々と出会えて非常に有意義な映画祭だった。
と、映画祭の率直な感想をかいてみたので、作品の感想に移ろう。

とにかく面白い! そして、人間は多かれ少なかれ悪の心を持っているいわゆる「性悪説」をひしひしと感じた。日本人特有と思われがちな「本音と建前」という2つの仮面が人類普遍なのだということを痛感した。人間のもつ心の本質をリアルに、そして娯楽作品の形をもって表現できたこの作品は、他のインド映画とは一味違う。
前半部分は、主人公「ナヌゥ」のエピソードを、周りの人の話という形で面白おかしく表現している。ナヌゥは小さいときから「嘘をつかない」で育ってきたので、大人たちの表面を取り繕った嘘にははなはだ許せなかった、少年時代のナヌゥが導師の嘘に対しこぶしで顔を殴ったシーン、大人になってからは、じっと家にいる奥様を窓から口説いてみたり、僧侶の持つ聖水(どうやらキツい酒のようだ)を強引に僧侶自身に飲ませて僧侶の偽善振りを暴露したり、などなど、普通では考えられない、でも人間の本質を的確に突いていて、なおかつ面白く表現できている。ダークヒーローものは殺伐としたイメージが強いかなと思いがちだが、ここまで楽しめる作品も珍しいと思う。 現に、私は腹を抱えて笑いっぱなしだった。

前半部で、主人公と同居人(娼婦)、恋人(小娘)、金づる女(金持ち)の3人女性のエピソードを紹介した上で、後半部では物語の核心が描かれている。なんと、3人の女性にそれぞれ別々に結婚(もしくは独占的に付き合うことを)を迫るのである。いや、結果的に2人には迫られ、金ヅル女には金のために結婚を迫るのだ。そのときの、相手の女性の言葉によってナヌゥの気持ちが二転三転するのが非常に面白い。「んあぁ。またかよ。」と、頭を抱えつつも、ナヌゥの持ち味だなとつい笑ってしまう。
ナヌゥの三又(みつまた)交際もついにバレてしまい、ついに追われる身になるが、もともと強いゴロツキなのでそう簡単にやられはしない。ラストで3人の女性に追い詰められる前にナヌゥは「自我を捨てたらいいのは判っている。しかし俺にはできないのだ。」と苦悩する。
前半のただ面白おかしいストーリとは一変してシリアスな展開に進展する。構成として前半と後半のメリハリがしっかりしている。シリアスにといえども、前半の娯楽性を持ちつづけたままというのが良い。しっかり娯楽映画を貫き通しているのだ。

ウペンドラ氏自身、この映画は何回も見ないと内容を完全に理解できない。と言っていたが、インドの文化を良く知らない我々ではなおさらではないだろうか。国が違えば、風習、価値観などが違って当たり前。本当に何度も観たいので、是非ともウペンドラの国内一般上映の実現と、本国でのDVD化の実現を願っております。



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